わたしたちの活動について

目が見えないから、耳が聞こえないから、体が不自由だから、肌の色が違うから、男だから、女だから…   だからかわいそう… だから助けなくちゃ… だから違うんだ…

メノキは、こうした「だから」の壁を乗り超えて「誰もが立ち位置は同じ」という視点で活動を続けています。

2021年秋に設立した当時は、「見えなくなった彫刻家」三輪途道が直面する困難や課題をどう解決するかを活動の目的にしてきました。見えない人が美術を鑑賞する方法はないか―。まず取り掛かったのがこの問題でした。

三輪にとって美術館は作家として刺激を受ける場所であるとともに、鑑賞の喜び、自分の作品を展示、鑑賞してもらう場でありました。いわば、日常のなかのひとつが美術館でした。それが、見えなくなってからは足を向けることが皆無になりました。一人で行っても鑑賞することができなかったからです。

加えて、見えなくなって気付いたことに、「見えない人は手が目である」という現実です。視覚に頼れない以上、手指で対象を触って確認するしか方法はありません。

メノキが目指す「障害とアートをつなぐ」活動の第一歩は、「美術鑑賞」と「触る」を結んだ「触る彫刻展」開催となりました。この時、地域の横のつながりの必要性を感じ、地元企業、大学、公立美術館、芸術団体などに連帯を呼び掛けたところ、幸いにも私たちの活動に賛同してくださることになりました。こうして2021年12月、「視覚障害者と晴眼者のための共生芸術活動環境創造プロジェクト実行委員会」が立ち上がりました。

同実行委員会の協力を得て、メノキ最初の事業、「見えない人、見えにくい人、見える人、すべての人—感じる彫刻展―」を2022年10月から12月にかけて前橋市の(株)ヤマト本社ギャラリーで開催しました。

その後は、展覧会開催だけでなく、障害者が美術鑑賞しやすい環境をつくるための人材育成事業に群馬大学と連携して取り組んだほか、三輪が開発した、触って楽しむ福祉共生かるた「みんなとつながる上毛かるた」の普及などに力を入れています。

これらの取り組みを重ねるうち、障害の有無などを超えてアートでつながる「インクルーシブ(包括的)アート」の可能性に行きつきました。これを受け、2024年、実行委員会は「ぐんまインクルーシブアート環境創造プロジェクト実行委員会」と名称を改めました。

メノキは今後、障害者とアートをつなぐ人材育成のための講座開催のほか、触察(しょくさつ)」の研究を深め、触る彫刻作品だけでなく、絵画の立体コピーや木彫による立体作品化などを通して「触って対話する鑑賞」や誰でも楽しめる「触察絵本」にもチャレンジしたいと考えています。

視覚障害者の文化的なサポートという観点を押さえながら、より多様な人とつながり、交流の場を広げていくことを新たな目標のひとつとして活動を展開していく所存です。

⚪︎「ぐんまインクルーシブアート環境創造プロジェクト」実行委員会
多胡宏(たごひろし)実行委員会会長
三輪途道 副会長
福西敏宏 事務長
富沢充芳 会計監査

⚪︎団体名
一般社団法人メノキ
群馬大学
群馬県障害者芸術文化活動支援センター「こ・ふぁん」
群馬県立近大美術館
群馬県立館林美術館
アーツ前橋
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
中之条ビエンナーレ
株式会社ヤマト
朝日印刷工業株式会社
株式会社ジンズ

協力
群馬県立点字図書館


「ぐんまインクルーシブアート環境創造プロジェクト」実行委員会

「ぐんまインクルーシブアート環境創造プロジェクト」実行委員会会長 多胡宏

「視覚障害者と晴眼者のための共生芸術活動環境創造プロジェクト実行委員会」は群馬大学共同教育学部美術教育講座と、全盲の彫刻家が代表を務める一般社団法人メノキの連携でスタートした。

地域のなかでアートを通じた共生社会への取り組みを進めてきた国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ(群馬県中之条町で隔年開催)」を企画運営している「中之条ビエンナーレ実行委員会」も連携の輪に加わった。

こうして2021年12月、群馬大学、一社メノキ、協賛企業、中之条ビエンナーレ実行委員会で作る「視覚障害者と晴眼者のための共生芸術活動環境創造プロジェクト実行委員会」がスタートした。

翌2022年12月には「アーツ前橋」、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館が合流した。同時に群馬県立館林美術館、群馬県立点字図書館の協力も取り付けた。実行委員長には、障害者のアート活動を長年にわたり支援している版画家で元群馬県立盲学校長の多胡宏氏が就任した。

2022年には「視覚障害者と晴眼者のための共生芸術活動環境創造プロジェクト実行委員会」を「ぐんまインクルーシブアート環境創造プロジェクト実行委員会」と名称を改め現在に至る。

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