勧進88について-メノキへのご支援のお願い

寺社の建立・再建などの公的な目的の資金集めを、古い言葉で「勧進(かんじん)」と言うそうです。

800年ほど前、源平の争乱で焼失した東大寺を復興すべく、資金集めに奔走している一人の僧侶がいました。俊乗房重源というその僧は、その時すでに60歳を越え、数々の困難に直面しながらも、類稀なる情熱とさまざまなアイディアで、大仏殿の再建を含む莫大な費用を集めます。立派に東大寺の再建を成し遂げた重源は大勧進と呼ばれるようになり、彼の坐像は今日まで東大寺に伝えられ、国宝となっています。

一般社団法人メノキの代表、彫刻家の三輪途道は学生時代、卒業制作としてこの国宝の重源像の模刻に取り組みました。藝大の大学院の一学生だった三輪は、この国宝の坐像が収められている俊乗堂に赴き、管理をしていた女性に話をしただけで、さっさとその裏手に陣取って模刻の作業を始めます。本来なら公式の窓口を通じて申請し許諾を取り付けなければならなかったところを、とにかく彫りたい一心で、いきなり作業を始めてしまったのです。そのことは、東大寺の中で問題になったらしいのですが、その直向きな姿勢に、煩雑な手続きは全て内部で処理され、ある日三輪のところに一人の僧が来て、「この書類に名前を書いて」と言っただけで、三輪は複雑な手続きに煩わされることなく、模刻に集中することができたそうです。

完成した重源上人の模刻像は東大寺に納められ、その後、東大寺から正式な依頼を受け、三輪は東大寺四聖の一人である菩提僊那像を制作することになりました。

その後、網膜色素変性症を発症した三輪は、10年という長い時間の中で少しずつ視力を失い、数年前から全盲となりました。しかし、視力をなくしたと言っても、旺盛な制作意欲は衰えず、むしろより一層強くなっています。

見えなくなったことを逆手にとって、触覚だけで立体造形をするという前人未到の境地を開拓しつつあります。

また見えなくなったことで、視覚障害者の当事者として、障害者が芸術に触れることが困難な社会であることに気づいた三輪は、一般社団法人メノキを立ち上げ、視覚障害者と健常者をアートでつなぐという理念のもとに、さまざまな活動を始めました。

「見えなくなったことは、この社会のさまざまな問題に立ち向かうようにという、天から与えられた使命だ」と三輪は語ります。

三輪は視力を失う前から、地域性・土着性を重んじ大地に根ざした表現を追求してきました。そして、三輪にとっての大地とは、彼女が生まれ育った下仁田、その隣の富岡・安中などの西毛地域、そして鶴舞うかたちの群馬県です。

視覚障害者と健常者が、地域の誇りである上毛かるたで一緒に遊ぶことができないか。

群馬県立点字図書館の細川館長から提案されたテーマに、一般社団法人メノキは、大学・地元企業・美術館などで構成された実行委員会のもと、地元企業であり大きなサポートを寄せて頂いたジンズの地域共生事業部と「ミルミルつながるプロジェクト」を組織し取り組むことになりました。さまざまなアイディアを試し、最終的に当事者である三輪が自ら触覚によるデザインを手がけ、仕事仲間である彫り師とともに、触って遊ぶ「みんなとつながる上毛かるた」を作り上げました。この初版は、複製版も同時に作り、点字図書館などで視覚障害者のみなさんに遊んでいただき、中之条ビエンナーレに出展し、さらに多くの人に触れていただき、群馬県内の小学校・大学などで共生社会を考えるための授業に使われることになりました。

また現在、この初版で得た知見をもとに改良版を製作中で、8月10日から富岡市美術博物館で開催される「みんなとつながる上毛かるた」展で公開いたします。

この活動をさらに広げ、群馬県内の教育機関で子どもたちや学生たちに知ってもらい、共生社会群馬のための重要な教材として広めることがわたしたちの切なる願いです。

しかし、全てを手作りで作っているため、膨大な作業と時間、そして費用がかかります。また、一方で視覚障害者と健常者をアートでつなぐ「インクルーシブアート研究会」をメノキは主催し、毎月専門家をお呼びして開催しており、この運営にも費用がかかります。現在、かなりの負担がメノキにかかっている状況で、これらの活動を続けていくためには、どうしても地元の企業・会社のみなさまの尊いご支援が必要なのです。

勧進88は、三輪にとっても深い思い入れのある重源上人にあやかって行う、令和の群馬の共生社会のための勧進です。88という数字は、みんなとつながる上毛かるたの初版・改良版それぞれ44枚を合わせ、計88枚の読み札の裏に、ご支援いただいた会社・企業名を入れさせていただくことから来ています。

どうか、わたしたちの活動の趣旨にご賛同いただき、共生社会群馬のために、三輪代表が表現の土台としてきた群馬の未来のために、尊いご支援をいただきますよう、お願いする次第です。

2024年7月 一般社団法人メノキ

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camp-fire「共生上毛かるたを教育の場に広げて群馬県を「共生社会」の先進地域に!」

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